HISAI芸術家の住む町プロジェクト2024
13日(土)~27日(土)「旧水洋屋」で成果発表展
内モンゴル出身のO33さん
津市の新たな魅力創造へ

 芸術家(アーティスト)がその町に暮らしながら、人々との交流を通じ、地域に根ざしたアートを創造する「HISAI芸術家の住む町プロジェクト」。このほど作品が完成し、明日13日(土)から津市久居アルスプラザ館内ギャラリーおよび商店街に残る「旧水洋屋」において披露される。

 一定期間、津市内に滞在し、この土地の風物や文化、人との関わりの中で生まれるアートワークの一端を開示する新趣向のアートイベントで、4回目の今年は中国・内モンゴル出身のO33(オーサンサン)氏を招聘。作品は、腸素材(主に羊腸)を用い、その揺らめきを自身のアイデンティティの問題とも重ねながら、曖昧さや儚さを表現したもので、過去作品にはないユニークな仕上がりとなっている。
 過去展では、同地の地場産業であった瓦に焦点をあてたオブジェクト、ドキュメンタリーの手法を用いたフィクション映画、久居の地で出会った風景を意識した絵画作品を紹介した。今回はアルスプラザを飛び出し、商店街の空き店舗を使って、かつて生活空間だった場所を作品の一部として取り込み、一体化させた。人の営みを感じさせる芸術空間(インスタレーション)となっている。

■津市の魅力創造につながるか
 招聘作家については、初めて三重県を訪れるアーティストの中から、自身が持つこの土地の歴史や文化に関する知識を参考にしながら、決めている。その土地の有形無形の情報を得て制作にあたるだろうから、土地のバックグラウンドを把握しておいた方が望ましいとの認識に基づいている。制作においては、材料に地元産品を取り入れることも勧奨しているという。
■アーティスト・イン・レジデンス
 同プロジェクトでは、アーティストがその町に暮らしながら、その町らしいアート作品を作ることが期待されている。今回O33氏は、伊勢木綿や染物、わら細工の各工房をはじめ、寺社やまちかど博物館などを見学し、知識を深めた。自身のこれまでの蓄積とここ津で得た人との新たな出会いを糧に、いかなる成果物が誕生するか。期待度は高い。
 主催する久居アルスプラザの催事担当、鹿毛貴之さんは「県外から招く作家が自ら津市をリサーチし、津市ならではのアート作品を生み出してもらう創造事業。アーティストにとっても、現地で作品を生み出すこのスタイルが力量として蓄積され、今後の制作活動に直結するだろう」と見ている。「新しい土地で刺激を受け、そこから生まれるインスピレーションは制作活動に大きく影響する。ぜひ津市での経験と発見を生かしてもらいたい」と今後の芸術活躍に期待を寄せる。
 アーティスト・イン・レジデンス事業は、現在県内では津市だけが実施している。商店街の空き店舗を活用した今回の芸術的試みは、津市が抱える空き家問題への問いかけともなり、解決に向けた一つの視座を得ることにもなる。
 また、今回は完成披露の形を取ったが、将来的には制作途上の様子を公開する試みも考えられる。まちおこしを視野に入れたアートイベントとして、市内外から注目を集めそうだ。
 展示は「旧水洋屋」(津市久居本町1346-8)、今月13日(土)~27日(土)11時~19時(入場は18時45分まで)。火曜休館。観覧無料。