稲垣 司さん(63歳)
災害をドラマチックに伝えたかった!
定年前の5年間、県職員として防災対策部で三重県の防災対策に奔走した。退職後、防災対策啓蒙の書「やるっきゃない!”俺たち県庁防災対策部」(マーブルブックス・1512円)を平成28年7月に発刊した。ドキュメンタリーから一転して昨年11月、防災啓蒙小説「オリオンの涙」(パブフル・540円)から出版。続いて3作目は「ハッピーバースデイ・トゥーミー」(オンデマンド・972円)も出した。
東日本大震災への被災地支援、紀伊半島大水害への災害対応、伊勢志摩サミットへの防災・危機対策などに、部のリーダーとして采配を振るった。1作目は県民をはじめ多くの人々を災害からいかに守るか、悩み苦しみながら実践してきた実録記だ。好評で4000部を売り切った。
2作目を小説にしたのは「もっと分かりやすく地震や防災こことを書いて、読む人に理解してもらいたかったから」という。発生した過去の大地震を主人公に語らせるにはタイムスリップしかない。荒唐無稽(こうとうむけい)でもドラマチックに読者に伝えることができればればと考えた。
特に“自助”の必要性をてんこ盛りにした。第1部「戦争編」、第2部「地震編」。第1部では空襲警報が鳴り響く昭和20年(1945)にタイムスリップした草薙健人が主人公。戦争孤児の天花寺ユメと出会い、親しくなって生活し始めたばかり。目の前でグラマンの機銃掃射で射殺される。非戦闘員を無差別に殺傷する米軍の姿をリアルに描き出している。「戦争は究極の人災だ」と。
「東北にも悲しい話があります。嫁がてんでんこで逃げれば助かるのですが、姑を残して逃げていけない。そんなことをしたら生きていけない土地だからです。多くの消防団員が住民を守るために、必死の使命感で死んでいったんです」
自身の体験を重ねて、物語は展開する。生き残った健人は、失った人の分まで生き抜こうと命がけで学び、働き、家電会社のトップに上り詰める。タイムスリップによる時代の予見が役立ちはしたが、懸命に生き抜いた証でもあった。「最後に主人公は死にますが孫が母親と出会う。物語はハッピーエンドがいい」。
読後に豊かな気持ちにさせてくれる作品だ。アマゾンから手軽に購入できる。
「ハッピーバースデイ・トゥーミー」は子どもたちへのエール、大人たちへの励ましを描いた作品。
問い合わせは電話***(***)****、メールt-inagaki@mie-kousha.or.jp