特別展観「学山高田」の文化
9月29日(日)まで真宗高田派本山専修寺 宝物館「燈炬殿」
茶道具の名品を展示
津市一身田町の真宗高田派本山専修寺宝物館「燈炬殿(とうこでん)」では9月29日(日)まで、定例の仏教文化講座に合わせ、特別展観「学山高田の文化」を開催している。専修寺を舞台に繰り広げられた学問の世界と、独自の茶の湯の文化を知る展示として注目したい。
専修寺では、真宗高田派の教学の理念を学ぶための場として寛政8年(1797)に勧学堂が建てられ、研鑽の高まりとともに「学山高田」の名で呼ばれた。一方、茶の湯を介した文化人との交流も盛んになり、独自の文化が花ひらいた。同展では江戸時代中・後期、専修寺に設けられた学舎「勧学堂」のあり方、十八世・円遵上人(一七四六~一八一九)在世の頃さかんになった茶の湯を中心とする文化交流の様子、さらには皇室とのつながりを37点の歴史資料とともに紹介している。
同展は三部構成。
第一部「学山高田とよばれた専修寺」では、円遵上人の手に成る「勧学堂額」を象徴的に展示。僧侶の研鑽の場である「安居(あんご)」で使われていたテキスト『天台四教儀集註』や図表『天台法門大観之図』2幅のほか、親鸞聖人の書籍の注釈本『教行信証師資発覆鈔』などを紹介している。同本は親鸞聖人の思想の伝播と浸透を目的としたもので、その数実に全250巻。学僧たちの熱量には相当なものがあった。
円遵上人は芸術にも造詣が深く、十七世・円猷上人から茶道の流派「宗旦古流」を継承し、たびたび茶会を開いて、津藩主や僧侶など幅広く交流を持った。
第二部「専修寺の茶と道具」では、円遵上人が残した茶会の記録『茶会記』にある茶道具の再現展示を行っている。同記には40年間に催された茶会240回の訪問者、使われた茶器類、茶席料理などが仔細に記されており、津藩主、久居藩主、商人、僧侶らが招かれて四季折々に茶会を愉しんだことが伺える。再現された茶道具には『花生 竹一重切花入 銘 薄紅葉』(伝 小堀遠州作)や『茶杓 共筒』(伝 利休作)、『青磁手桶形水指』、『備前焼火襷(ひだすき)肩衝茶入』(伝 千宗旦所持)など数々の名品が混じり、当時のままの姿で眼前にできることはやはり圧巻の一語に尽きる。
学芸員の青木妙法氏は、「江戸時代の茶会の風景を想像していただけるのではないでしょうか。『茶会記』は『草人木水易記』とも書き、『茶湯記』の一字一字を分解して充てたらしく、円遵上人の言語センスが偲ばれます」と話す。爽やかな印象の書名である。
十世・真慧上人の頃、専修寺は皇室の御祈願所に指定され、やがて皇室との関わりが生まれ、深まってゆく。文物などの行き来も増え、御下賜品として所蔵に至ったものについて、第三部「専修寺と宮家の文化」で紹介している。とりわけ、『白薩摩蓋透蝶亀甲文彫香炉』は、蓋の幾何学模様といい、胴の蝶文の線の細さといい、精緻な彫りに息を飲むばかり。このほか、『三狗図』(円山応挙)、『春圃眊猫図』(原在明)などの日本画をはじめ、『七宝花鳥文花瓶』、『色絵花盆文花瓶』など、近代工芸至高の技の美が伝えられている。
「親鸞聖人の教えにであう」施設として、令和5年5月にオープンした燈炬殿。前庭の池には、今を盛りとスイレンが花を結んでいる。青木学芸員は「江戸時代中・後期に興隆期を迎えた学問の世界と、同時に花ひらいた文化の世界をこの展示を通して楽しんでいただければ」と話している。
開館時間:10時~15時30分(入館は15時まで)
休館日:毎週月曜日
観覧料/一般1000円、中高生500円、小学生以下無料
問合わせ:電話059(232)7234