麻しん(はしか)の感染拡大「想定外」
40歳代以上は予防接種をしていない
県内で麻しん(はしか)の感染者が大人世代に拡大している。宗教団体ミロクコミュニティ救世神教(津市上部長谷)が昨年12月23日(土)~30日(日)、同本部で開催した研修会に参加した県内外の信者49人のうち、県内の24人が麻しんに感染したことが分かったと、1月23日(水)県健康医療保健部薬務感染対策課が発表した。これにより1月24日(木)現在で感染者は39人となった。さらに2次感染、3次感染が判明しており、県では注意喚起を呼びかけている。
感染経路は空気感染、飛沫感染、接触感染で、感染力が非常に強い。感染力はインフルエンザの10倍ともいい、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100%発症する。「患者と直接接触した」場合はもちろん、「患者から2㍍以内の範囲」でも飛沫感染が可能、さらに「患者と同じ空間を共有した」場合も感染の可能性が高まる。
県への第一報告は1月8日(火)。順次患者が増え、感染源、感染経路が問題になったが、県は明らかにしなかった。その理由として「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律に基づき、集まりの団体名・詳細は『予防に必要な情報に該当しない』」としてきた。
ところが1月22日(火)、ミロクコミュニティ救世神教がインターネット上で「お詫び」を公表。「当コミュニティは医薬に依存しない健康や、自然農法による安全・安心な食を基にした信仰生活をおもんじており、今回の感染者にはワクチンを接種していない信徒もあり、結果的に多くの感染者を出してしまい…、この度の予期せぬ事態に、麻しんなど感染リスクの高い疾病のワクチン接種について、今後は保健所等の指導に従い対処」と釈明している。
麻しんの感染が、信仰によるワクチン未接種者の集団による媒介で拡大した。県担当者は想定外の事態によるとするが、このことが市民の不安を増幅することになった。
三重タイムズの麻しん記事掲載(1月18日号)後に、「研修会参加者に孫が通う保育園の保育士がいる。なぜ早く公表しないのか!」と強い口調で詰問する電話があった。
本来ならば、情報を一手に掌握する県当局が感染拡大を防止するため、速やかに発表して注意喚起を促す必要がある。津市の保健担当者は「新聞情報しかいただいてません」と残念がる。
市民の不安拡大には麻しんをよく知らない現状がある。麻しんウイルスにより起こる急性の全身感染症。感染後7~14日で発熱、咳、鼻水などの症状が出て、2~3日熱が続いた後、39度台の高熱と発しんが現れる。肺炎、中耳炎を合併しやすい。千人に1人の割合で脳炎が発症すると言われている。
マスク、手洗いでは防げない。予防の唯一の方法はワクチン接種。2回接種で確実な免疫がつくとされているが、予防接種は1978年に定期接種となったが1回だけだった。2006年から幼児の2回接種制度が始まった。1987年から1990年4月1日に生まれた人は1回または一度の接種していない可能性がある。27歳~40歳が免疫の「空白世代」となった。
心配な人は母子手帳で接種の有無は確認できる。わからい人は抗体(免疫)があるかどうかの抗体検査が必要。費用は5千円~7千円。結果が出るまで4、5日かかる。ワクチン接種はMR(麻しんと風しんの混合ワクチン)で医療機関によって9千円~1万2千円。小児科医院以外はワクチンを常備していないので予約が必要。
麻しん発症が分かった場合、医療機関に連絡し、公共交通機関以外の交通手段で受診する。
津市は保育所、認定子ども園、幼稚園及び保健センターなどの市職員で、十分な麻しん抗価を持っていない人を対象に、一人当たり1回を対象に予防接種費用の2分の1(上限5千円)を助成する。3月末まで。問い合わせは市健康づくり課電話059(229)3310。