県立の夜間中学と学びの多様化学校(文部科学省へ申請中)を併設する「みえ四葉ケ咲中学校」が来年4月に開校 
 

 県立校としては全国で初めてとなる、不登校などの現役中学生を対象とした「学びの多様化コース」も併設予定
 「一人ひとりの願いが芽生える・伸びる・広がる学校」を目指す!
10月以降、入学希望者向けの説明会を開催。
 10月12日(土)13時半~津市一身田上津部田の県文化会館小ホールで、開校前記念イベントとして、映画『へたくそな字たち』の上演会と、同映画の作・演出家の大西弘記さんと岡田敏之さんとの対談

三重県は来年4月、津市柳山津興の県立みえ夢学園高校の研修棟に、初の県立夜間中学として「みえ四葉ケ咲中学校」を開校する。同校では国内初の試みとして、学び直したい生徒だけではなく、不登校などの現役中学生も受け入れる予定で、県教育委員会は「学びの多様化学校」として文部科学省に指定を申請している。

 最新の国勢調査で「義務教育の中学校まで卒業していない」と回答した人の数は90万人。三重県には1万7千人が義務教育の中学校まで卒業していない」と回答した。
 夜間中学は元々、戦後の混乱や経済的な理由などで義務教育を受けられなかった人が学ぶ場として設けられ、最も多かった1954年頃には全国で89校が設置されていた。その後、就学支援の充実や社会情勢の変化に伴って設置数は減少したが、近年、外国人住民の増加、経済的な理由や家庭の事情で教育を受けられない人、不登校の増加など社会状況が変わり、役割を変えて再び夜間中学の需要が高まってきている。
 政府は18年の閣議決定で各都道府県に少なくとも1校は夜間中学の設置を推進するとしている。学齢(15歳まで)を過ぎて義務教育を受けることができるのは夜間中学だけ。
 来年開校する「みえ四葉ケ咲中学校」は、全校生徒は50人ほどを想定。夜間部だけでなく昼間部も設け、一般中学と同じ9教科を学び、最長9年間在籍できる。
 一般的な夜間中学では、様々な事情で中学時代にほとんど登校できなかったために実際に学校で学んでいないのに形式的に卒業した『形式卒業生』の学び直しや外国人らが学ぶ。県ではさらに、不登校の現役中学生も受け入れる。文科省が不登校の児童生徒向けに設置することを認めている「学びの多様化学校」としての機能を兼ね、児童生徒に寄り添った特別な教育課程を編成する。
 県内では令和4年度、何らかの心理的、社会的背景などで登校しない、登校したくてもできない不登校にが90日以上の公立中学生は2489人いて、約29人に1人という割合だった。これは現在の不登校の定義になった平成 10 年度以降、最多の数で、年々増加している。
 
(夜間学級の体験教室「まなみえ」)
 県教育委員会は、令和3年度から夜間学級の体験教室として津市と四日市市の2カ所で週1回、「まなみえ」を開講している。1日3時間で、教員免許を持つ教員が英語、数学、国語、理科、社会と、津では技術、四日市では音楽も教えている。
 津市と四日市市の教室に在籍しているのは現役の中学生10代から60代の約40人。津市の教室には約20人が通い勉強している。学びたいが教室に通えない生徒のために教室と生徒の自宅をオンラインでもつなぐオンライン授業も行なっていてる。
 夏休み前最後の授業が行われた8月3日には、英語や数学、作文発表の授業が行われた。学びたい気持ちが強い生徒たちが通っているため、どの生徒の目も真剣そのもの。活気あふれる授業が行われていた。英語の指導にあたっていた先生は「勉強させられているではなく、学びたいという意欲にあふれているので、教えていて楽しいです」と話した。
 昨年度から同校に通う40代の男性は「中学時代から不登校で外出できない日が続いた。夜間中学に通い、人や社会と接点が持てるようになり、自信がついた。学ぶことや友人と話すことの楽しさが分かった。今はもっと学びたいと考えています」と話す。
 県教育委員会事務局の前田亜弓夜間中学設置準備班班長は「学校として大切なことは経験させること。これまで人と写真なんて撮ったことがなかった。トランプなんてしたことなかった。そんな人たちもいます。たいそうな事ではない、写真撮るそれだけでも彼らには経験です。色々な経験を積み重ねてあげたい」。

(現役の不登校の生徒も受け入れる)
 みえ四葉ヶ咲中には、義務教育を修了できなかった人など満15歳以上が通う「夜間中学」と、不登校などの現役中学生が対象の「学びの多様化学校」の2つのコースが設けられる予定。
 夜間中学と学びの多様化学校を併設する県立の学校は全国初。県教育委員会では「現役の不登校の生徒も居場所のひとつとして選択してほしい。異年齢の人と学べるメリットも大きいと思う」と話している。
 文部科学省によると、夜間中学は2023年4月時点で、23都道府県・指定都市に44校が設置されている。2024年度(令和6年度)には新たに福島県福島市・群馬県・大阪府泉佐野市・鳥取県・宮崎市・北九州市・佐賀県・熊本県の7都道府県・指定都市、2025年度(令和7年度)には石川県・愛知県・名古屋市・三重県・滋賀県湖南市・岡山市の6都道府県・指定都市に設置される予定。
 不登校となっている学齢生徒の受入れに向けた検討状況については、「検討していない」が77.5%を占め、「不登校特例校として学齢生徒を受け入れている」は5.0%にとどまった。「今後、ニーズを把握しつつ、検討を開始する予定」は15.0%だった。
 前田班長は、「経済的な理由や家庭の事情など、いろいろな理由で義務教育を受けていない人、または、十分に受けていない人たちが学ぶ学校です。不登校の人もいれば高齢者もいれば若い人もいる。国籍も様々です。学びたいと思う気持ちを持って通ってくる人たちにとって、居心地の良い場所、学ぶことが楽しいと思える場所をめざしています。学びたい、友だちをつくりたい、一人ひとり願いは違うし、それをかなえる方法も違う。それぞれの思いに耳を傾け、願いをサポートしていきます。誰一人取り残されない教育を実現したい」と話す。
 

(開校前イベントや説明会)
 県教委は、夜間中学開校するにあたり、広く県民に周知するため、6月1日からイオンモール津南などで、開校前イベントを展開してきた。
 8月23日には県庁で学校説明会を開催。オンラインも含め入学希望者など約170人が参加した。授業料は無料で中学校卒業の資格が得られることや、入学時期は年度の途中からでも可能であることなどが紹介された。
 10月12日(土)13時半~津市一身田上津部田の県文化会館小ホールで、開校前記念イベントとして、映画『へたくそな字たち』の上演会と、同映画の作・演出家の大西弘記さんと岡田敏之さんとの対談が行われる。
 生徒の募集は、ことし秋ごろから始まる予定。10月以降、入学希望者向けの説明会を伊賀、伊勢、津、四日市各市で行う。津市での開催は10月7日(日)14時~15時・県庁講堂棟131会議室(津市広明町13)、10月12日(土)10時~12時・県文化会館小ホール、11月8日(金)19時~20時、県庁講堂。(※いずれも事前申込必要・個別相談可)。入試はなく、個別面談などを経て入学する。
 また、担当者が県内各地に出向き、学校説明や入学相談などを行う「出張、広報キャラバン」も実施し、広く周知を図っている。

(サポーター募集)
 同校では、卒業後を見据え『生きるための授業』にも力をいれる。一人で社会で生きて行けるよう、教科書上の学びだけではなく、掃除や料理、マナーやお金のことなど、知識として持っていたら助かることも触れさせていきたいと考えている。
 そこで、同校では様々な形で生徒の学びを応援する「県立みえ四葉ケ咲中学校サポーター・クローバーズ」を募集している。SNSなどでの同校の広報・店舗や企業でのステッカー表明・イベントスタッフなど様々な形で応援するサポーターを募集している。
 前田班長は「ずっと学校にいられる訳でない。学校にいる間に生きる強さやしなやかさを学ばなければならない。色々な方との出会いの中で、誰かの役に立つことの喜びを知ってもらいたい。得意がある方、教えに来ていただけたら」と話す。