三重中央医療センターに救急外来棟が新設
津市内の救急車3分の1を受け入れ
救急救命体制を充実!!
感染症に備え陰圧室2室新設
津市久居明神町の独立行政法人国立病院機構 三重中央医療センター(下村誠院長)に4月10日、同時に多くの患者を診察できる広い救急処置室(136㎡)、診察室3室、陰圧室3室、CTが撮れるx線検査室などが備わった救急外来棟が開棟した。119番をしてから病院に運ばれるまでの時間の長さが課題になっていた津市の救急体制が改善される。
三重中央医療センターは市の2次救急の要として、令和5年度(2023)には年間5612台(津市救急車の約1/3)平均すると1日15台の救急車を受け入れてきた。
同病院は救急科が無く、日中の受け入れた救急者の受け入れ対応は、内科や外科系の当番医が通常診療のかたわら行ってきた。当番医が検査や手術の当たっているときは救急車の受け入れをやむなく断るケースもあったが、令和4年(2022)7月、三重大学附属病院の三重大学救命救急部から専門医の派遣を受け、救急科を開設。津市の救急の中核病院として、救急対応体制の強化し、日中でも迅速に救急車を受け入れられる体制をとることができるようになった。新設して以来、同院の救急車の受け入れ件数は約千件以上増加し、同5年(2023)度には年間5612台、平均すると1日15台の救急車を受け入れた。多い日には1日に60人以上の患者が殺到する日もあった。
救急患者の初期対応を担当する研修医の希望者が、これまで10名に満たなかったところ、救急科新設と共に14人に増え、また救命救急士を採用したことにより救急患者に対応するスタッフが充足。救急科開設以来、救急車の受け入れ要請を断るケースがほぼ無くなった。
その一方で、旧救急室は非常に狭く、救急室に収容できない患者はストレチャーに乗せた状態のまま待合室で待機させたり、救急車で待機してもらうこともあった。
新型コロナウイルス感染症が発生して以降は、重点医療機関として約1200人のコロナ患者を受け入れてきたが、救急室内でのゾーニングが不可能で、野外に狭い仮設のトリアージ室を作り、診療を行ってきた。
◎悲願の救急外来棟
新しい救急外来棟はスタッフにとって長年の悲願。設計段階から積極的にかかわってきた下村院長は
8日行われた「救急外来棟開棟式」で、「津市の救急要請件数は今後も増加するち思いますが、優秀な人材と働きやすい環境を手にしたことで、なお一層津市の救急医療をしっかりと支えていきます」と挨拶した。
前葉市長は「津市久居地域の救急の要として、新救急外来棟が大いに機能することを期待しています。」とお祝いの言葉を述べた。
式典終了後には新病棟の内覧見学会が行われた。同時に多くの救急患者を診療できる広い処置室、診察室3室、新興感染症にも対応できるよう、感染症患者入口にはウィルス等で汚染された可能性のある空気を室外に逃さないようにし感染症の拡大を防止する2つの陰圧室などが披露された。新棟にはCTやX線検査室もあり、見学した人は「従来のようにCT室まで運ぶ時間や手間が省けるため、より多くの患者を診ることが出来るし、何より患者の負担が少なくなる。機動力が上がりますね」と話していた。
◎増え続ける救急出動
津市では今月から、三重大学医学部附属病院が県内初の「高度救急救命センター」になり、夜間・休日を含めた救急患者の受け入れ態勢について、従来の週1回から毎日に変え、搬送先に困った救急車をバックアップする体制が取られている。
津市の救急車要請件数は年々増加しており、令和5年中の市内における救急出動件数は1万8110件で、過去最多出動件数だった令和4年と比較して521件増加た。現場への平均の到着時間も約10分と、ここ数年遅くなる傾向にある。感染症が多発する冬の時期はもちろん、地球温暖化の影響で熱中症などが多発する夏には救急車がひっ迫するケースもある。
救急医療体制は重症度に応じて、入院の必要がなく外来で対応できる1次救急、主に入院治療を必要とする2次救急、高度処置が必要な重篤な救急疾患を扱う3次救急に分けられている。1次救急は津市応急クリニック、津市久居休日応急診療所、津市こども応急クリニックが対応し、3次救急には三重大学附属病院、三重中央医療センターが対応している。三重大学附属病院が「高度救急救命センター」になったことから、同センターの役割はさらに重要となる。
2次救急は、平成19年に現行の輪番体制がスタートし、現在9病院のうち、毎日2~3病院が、ローテーションで平日の夜間や土日・祝日に患者を受け入れる制度が取られてきた。「2次救急」を担う病院は全て民間病院で、病床数200床未満で、中には数10床という病院で輪番をしていたため、満床あるいは専門外、処置中と言った理由で救急車が入れない事態が度重なった。
津市では長年、けがや急病の現場に救急車が到着した後、搬送先の病院がスムーズに決まらず、患者を乗せた救急車が30分以上、現場にとどまる「救急搬送困難事案」が全国平均の倍以上の件数で推移しており、「倒れてはいけない街」と言われ、救急医療体制の強化が望まれてきた。