8地域で鳴り響く時刻サイレン
高野尾・栗真・大里・櫛形・片田・神戸・明小・雲林院
なぜ鳴らすの!?
火災、防災の告知が主目的だが…
ウォ~ンオーンと大音量で鳴り響くサイレン。当地に住んでいる人でなければ「何ごとか!」とびっくりほどの音だ。「時刻サイレン」と説明を聞けば納得する人が多い。少し前まで全国どこの地域にも鳴り響いていたという。少しずつ、姿ならぬ“音”を消していったが、津市内では今も8カ所で鳴り響いている。農村の伝統文化と言う声の一方で、「なんで鳴らしているのか、わからん。自分は3交代勤務なんで、サイレンの音で跳び起きることがある」という声もある。
全国の自治体ではサイレン音をさまざまに変えて、避難・火災・消防団招集のサイレンを市民への情報として鳴らしているところもあるそうだ。農作業で畑や田んぼにいると、時刻が分かって便利ともいうが、鳴らしている市役所支所の職員に「なぜ鳴らしているか」と聞くと、答えられない職員がほとんど。
鳴らしている時間も異なる。朝一番午前5時は高野尾出張所、午前6時が芸濃町明小学校と雲林院福祉会館。昼前は高野尾、栗真、大里、櫛形、片田、神戸の6出張所。夕方は午後5時が高野尾、櫛形、神戸出張所、午後4時が片田出張所。大半の出張所は家屋の屋上に、大音量が出る吹鳴式のモーターサイレン。鳴らす時間は20秒~30秒。
津市役所で時刻サイレンを所管しているのは市民部地域連携課。担当の松尾辰彦対話連携担当副主幹は「防災対策の一環で、動作確認のために鳴らしている。火災発生を住民に知らせたり、消防団員の招集が主たる役目。時報のためだけでは無い」と説明。なぜ8カ所だけ。それ以外の出張所は止めたのかという疑問に、「機器が壊れた際、地元で継続の希望が無いところは無くなった。消防団員の招集は携帯電話やメール連絡になってきた」と答えた。
朝昼晩と3回サイレンを鳴らす高野尾出張所は、「消防団の要望で団員が鳴らすことができる。地元自治会の続けてほしいという要望もある。高野尾は植木栽培が盛んな地域で時刻の周知は大事だ。豊が丘の住民から“うるさい”という苦情があったが、自治会で対処してくれている」と谷口善彦出張所長。
高野尾連合自治会の稲垣元康会長は「明治22年に高野尾村ができてから以来、サイレンは地域の絆だ。火事や防災面でもなくてはならない。以前故障した時に住民アンケートをとったら大半が継続してという答えだった。高野尾は純農村地帯で朝早くから草刈りや農作業のために田畑に出る人が多い。時刻サイレンは高野尾地区の伝統文化であり、将来も伝承していきたい」と話す。
芸濃町雲林院地区の元市議会議員の杉谷育生さん(75)は、「昔は年に一度は家屋火災があってサイレンで火事を知らせていた。今は朝だけなので、昼、夕方も鳴らしてほしいという声もある」と話している。
櫛形地区の畑で野菜作りをしていた女性は「私は毎日畑に来ているので鳴らしてほしい。風の向きによって聞こえにくいこともあって困る。昔はもっと音が大きかった。サイレンが鳴るまでがんばるのが毎日の生きがい」とにこやかに話した。
豊が丘に住むAさんは「20年以上前からサイレンの音がうるさいと苦情を言っている。豊が丘は3交代勤務の住民が多いのに、昔からの慣習で鳴らしているというのは非常識だ」と怒っている。
防災のサイレンなら毎日鳴らす必要は無い。時刻サイレンが必要なのかどうか。野山や海で働く一次産業の住民が減って、農村地帯でも人々はさmざまな暮らしを営んでいる。今も鳴らし続けている都市化の進んだB出張所では、大音量が出る吹鳴式のモーターサイレンでは無く、小さな音で直ぐに止んだ。鳴らし方にも工夫が求められるのではないかー。