妻の千春さんがクラウドファンディング

 松尾芭蕉の研究者で、三重大学教授だった夫・濱森太郎さんが残した遺稿「浅田寿貞の危篤通知」を、世に出したいと三重大学出版会の仕事を継いだ妻の濱千春さん(73)が、遺稿に加えて、難病と闘いながら芭蕉の研究に情熱を捧げた生涯をつづった「芭蕉の花咲く庭」を、クラウドファンディング(支援)で出版資金を集めるために募金を呼びかけている。
 当初の目標金額は出版費用の120万円。2月4日に早くも達成され、現在は支援者増加と一部カラー刷り、電子書籍化を目標として進めている。電子書籍化は、晩年の筋力低下により本のページをめくることも困難であった森太郎さんのように障害をもつ方にも手にとってもらえるようにという考えからだ。このプロジェクトはひとりでも多くの人に森太郎さんの最期の文章を届けたいという千春さんの切なる願いである。締め切りが今月28日。
 「芭蕉の花咲く庭」(A5判210ページ、定価1500円税込)は、濱森太郎さんの生い立ちから千春さんとの出会い、難病を発症しながら、芭蕉の研究、三重大学出版会の取り組みに情熱を捧げた姿をつづっている。
 1000部発行して、約500部を全国の主要図書館などに寄贈。200部をクラウドファンディングの出資者にリターンとして贈呈し、約300部を書店で販売する。出版社は濱教授が最後まで代表取締役を務めた(株)三重大学出版会。   
 濱森太郎さんは昭和22年(1947)愛媛県生まれ。広島大学大学院を修了後、昭和52年(1977)三重大学助教授、平成5年(1993)教授、平成22年(2010)退官。令和2年(2020)死去。この間、三重大学出版会を立ち上げ、平成15年(2003)株式会社三重大学出版会を設立。編集長、社長を歴任。著書に「巡礼記 奥の細道」「松尾芭蕉の1200日」「野ざらし紀行の成立」「芭蕉庵の終活」など多数。森太郎さんは、学生時代より心酔した芭蕉に招かれるように、芭蕉生誕の地・三重やってきた。そして海と山を抱く三重の自然と、その幸をこよなく愛したという。
 濱千春さんは昭和23年(1948)今治市生まれ。25歳で森太郎さんと学生結婚。3人の娘を出産。松山市の小学校、広島県の小学校、三重県の養護学校、中学校に38年間勤務。教員退職後、三重大学出版会に携わる。千春さんは「夫・森太郎は三重の地で研究生活をおくれたことを心から感謝しておりました。元気な頃は山歩きや芭蕉ゆかりの地をガイドして歩いたこともありました。歩行困難になってからも伊勢湾を眺めて過ごすことを好みました。また、他県からのお客さまがあるときには、三重の海の幸と山の幸を取り寄せて料理を作ることを何よりもの楽しみとしていました。」と話している。
 問い合わせは三重大学出版会=電話&ファクス059(232)1356。090(6140)1070。メールmpress01@bird.ocn.ne.jp