登場
津地区医師会会長
渡部 泰和さん(70歳)
新型コロナウイルス感染症が始まって直ぐに副会長として担当し、コロナ禍の真っただ中の令和4年6月に津地区医師会長に就任した。平成25年(2013)に副会長に就任して以来、防災担当だった。医師会員への協力呼びかけや、行政との交渉役として適役。多忙な日々が続く。
第8波がピークアウトして、5月の連休明けから感染症2類から。季節性インフルエンザ並の5類になり、マスクも自主判断に任せられる。「9月以降、7回目になるワクチン接種をどれだけの市民が受けてくれるのか。特に症状が軽かった若い人に一人でもたくさん受けてほしい。今年度は無料接種が続きます」と話す。
対新型コロナウイルス感染症対策は医療機関も大変だった。市内には検査、治療の病医院が54ある。内科は全部で83ですから半分以上がやってくれた。
「市内の医療機関は頑張っていたのではないいかと思います。問題は患者の動線を分けられるか。患者にうつすのもいけませんが、医師が感染すると、1~2週間休むことになり、医療従事者が減るんです。最初は石を投げられたり、風評被害がひどかった」と危機の日々を振り返る。
当初はピリピリしていて、ワクチン1本当たり5~6人採れるが、1本期限切れにすると大騒ぎでたたかれ。最近は期限切れワクチンを捨てることになってもニュースにもならない。「本当は、捨てるぐらいならもっと接種してほしいのが本音です。行政はそのことを強く言えない。残念ですね」と嘆く。
2類から5類になってもウィルスは変わらない。心配なのが変異種のXBB1・5。第9はXBBが増えている。「集団免疫が広がってはいるものの、連休後の状況を注視したい。もうしばらくは感染予防をしていただきたい」と訴える。
少し時間の猶予を与えられている状態。県は診られる医療機関と病床を増やそうとしている。今は救急の二次医療機関でも5床とか入院受入を増やしている。ワクチンを打てば重症化は防げる。再び爆発的に感染が広がった時までに体制を取れるようにしないと」と強調し、危機感を募らせる。
三重大学医学部附属病院第一外科が長かった(1980~1995)。平成8年(1996)に津市乙部で渡部クリニックを開業、23年になる。消化器内科の患者が多いが、痔(じ)の患者も多く、外科の患者もよく来るという。「ちょっとした外傷を診てほしいのに、縫うのを嫌う医師がいるので、救急の課題ですね。応急クリニックも担当でずっとやっていますが、手術できるように機械も整備して貰いました。内科の先生でもけっこう診てくれるんで助かります」と打ち明ける。
医師会の活動は平成10年に三重県保険医協会の理事、同18年には津地区医師会の理事に。以来、防災や応急クリニックに取り組んできた。県保険医協会の会長も6年間勤めた(平成23年~29年)。
「校医、産業医、福祉事務所の嘱託医、応急クリニックの主幹医師など、時々、市の職員に間違われるくらい市の仕事をしましたね。災害時の医療従事者のメーリングリスト、救護所の整備にも取り組みました。スピードアップが今後の課題です。災害はいつ発生するか分かりませんからね」と緊張気味に話す。50人以下の事業所の健康審査を行う産業医の活動も医師会と並行してやってきた。
津市は市民病院がなく、民間の総合病院が輪番で二次救急患者を受け入れている。市内の総合病院に全てが揃っているわけではない。6月から三重大学医学部附属病院が二次救急の輪番に再度入ることになった。
「三重大にER(救急救命室emergency room)センターを作る話が出ています。救急車の到着時間が再び延びています。開業医でも診られるところは診るとか考えないといけません。市民の皆さんも119番救急車の利用を良く考えて協力していただきたい」。津市の医療の明日を見つめて訴えている。
◆津地区医師会=津市島崎町97ー1。電話059(227)1775。